2024年04月24日 09:52最新の情報です

コーヒーフレーバーホイール2016

コーヒーフレーバーホイール2016

珈琲のフレーバー

コーヒーには、基本的な味覚である「苦みのある」「酸味のある」といった表現などを使うことがあります。「チョコレート」「ナッツ」「キャラメル」や「ベリー系」「柑橘系」の果物や、「シナモン」や「ハーブ」といったスパイス、あるいは「ジャスミン」など花に例えることもあります。SCAコーヒーフレーバーホイール2016にはそれらのフレーバー要素がFLORAL,FRUITY,SOUR/FERMENTED,GREEN/VESITATIVE,OTHER,ROASTED,SPICES,NUTTY/COCOA,SWEETのGENERAL FLAVORSを中心に円グラフ状の法則性に従って構成されています。


コーヒーフレーバーホイールとは?

SCAフレーバーホイール

コーヒーの官能評価は、古くは1922年のukerの著書「All About coffee」内でカップテストとして始められていました。カップテストを行う人は「カッパー」と呼ばれカップを介してテストすることを「カッピング」と云います。カッピングは見習い制度を介して非公式に教えられ、生豆業者や焙煎業者に限定されているものでした。1800〜70 年代のコーヒーの品質と鮮度に重点を置いたスペシャルティ コーヒー運動の出現により、古い習慣に新たな関心がもたらされました。 新興企業は、規模は小さいものの、サンプル ロースターやカッピングテーブルに投資し、それまで大規模なトレーダーやロースターに限定されていたスキルを実践するようになりました。 1984年、アメリカ スペシャルティコーヒー協会 (SCAA) のテッドリングルは、コーヒーカッパーズハンドブックの初版を書きました。これは、コーヒーの官能分析に大きな革命をもたらしました。コーヒーのテイスティングは、誰でも実践して学ぶことができるテクニックだが、「体系的かつ厳密でなければならない」という考えを強調するものでした。この研究でリングルは、急成長しているセンサリー科学の分野からの洞察を統合し始め、ローズ マリー パンボーンの出版物を参考に、コーヒーのフレーバーを説明する約150 の用語を含むコーヒーの初期の「原語辞書(proto-lexicon)」を導入しました。
sensorylexicon
SCAA/CQI/WCR/COEの関連性
2001 年、Paul Katzeff は The Coffee Cupper’s Manifesto を作成しました。これは、コーヒー生産者がコーヒーの官能分析とスコアリングの手法を学び、歴史的にコーヒー価格が低迷している時代に市場支配力とコントロール強化を目的とした文書です。 コーヒーのカッピングによるセンサリー分析は、単純な品質分析手法ではなく、コーヒー市場に力を及ぼす普遍的な言語になる可能性があるというこの考えは、コーヒー業界全体で普遍的なセンサリートレーニングを提唱するきっかけになりました。 この頃、ジョージ・ハウエルは新しいコーヒー官能採点システムと形式を考案し、「COE(カップ オブ エクセレンス)」と呼ばれるコーヒー コンテストで使用され始めました。このシステムは、各国のコーヒー コンテストや受賞コーヒーのインターネット オークションを通じて、コーヒー生産者のエンパワーメントとより良い価格向上を目的としています。 2001 年、Ted Lingle と共同研究者は新しい SCAA カッピング フォームとプロトコルを開発し、SCAA のシステムを更に発展させました。 これにより、最初は SCAA で、次に SCAA が設立した 「Coffee Quality Institute (CQI) 」と呼ばれる団体で、コーヒーのグレーダーとテイスターを教育およびテストするためのプログラムが開発されました。Qグレーダー プログラムと呼ばれるCQIプログラムは、SCAAプロトコルに基づいて世界中のコーヒーテイスターを共通言語をベースにトレーニングすることを目的としています。このプログラムを通じて、何千人ものテイスターが SCAA カッピングプロトコルと100 点満点のスコアリングシステムを学び、普遍的でグローバルなコーヒー官能評価手法を実践し始めました。2008 年、ティム シリング博士が率いるコーヒー研究者のグループは、SCAA の100ポイント コーヒー カッピング テクニックを使用して改善されたコーヒー加工技術を開発するための体系的な研究実験を始めました。この実験は、SCAA カッピング スコアをコーヒーフレーバー記述子にリンクすることは簡単な作業ではないという結果から、「ワールド コーヒー リサーチ (WCR) 」と呼ばれる新しい機関の設立と、センサリー科学の分野からの技術の再調査という2つのことに繋がりました。 コーヒー研究ではめったに採用されていなかった定量的官能記述分析手法がSCAA手法よりも研究に適していることに気づき、エドガー・チェンバーズが率いるコーヒー研究のための正式で科学的な「辞書」を開発するプロジェクトがカンザス州立大学でスタートしました。 1999 年に、ワイン業界が全体的な品質を伝えるために 100 点満点の採点システムを採用したことに触発されて、Lingle と SCAA の協力者は、数学的スコアリング モデルでコーヒーの品質を定量化しました。また同じ頃、アン ノーブルのワインアロマ ホイールに触発され、Lingle は最初のコーヒー テイスターズ フレーバー ホイールを開発しました。
フレーバーホイール
これは、コーヒーのフレーバーを、コーヒーのフレーバーの指標となる視覚的なツールに整理することを目的としていました。1997 年、Jean Lenoir は、コーヒー テイスター向けのアロマ トレーニング キットである Le Nez du Café を開発し、コーヒー業界にとって便利なアロマ リファレンスのセットを提供しはじめました。 これらのツールは、昔ながらのカッピングルームの伝統的な語彙 (「Rioy」、「Baggy」、「Grady」などの専門用語を使用) を感覚科学の新しいアプローチと統合することを目的としています。Qグレーダーの養成所ではこれらのフレーバーホイールやアロマキットを基にトレーニングを行い珈琲のフレーバーについて世界標準珈琲プロトコルとして合宿形式で学びます。

当店ではアラビカとロブスタのQグレーダーの養成所で学んだ経験を元にSCA最新フレーバーホイールを独自にイラストレータでデータ化し、ローカライズ&オリジナルフォントでリデザインしています↓。
SCAフレーバーホイール
コーヒーアロマキット
Le Nez du Café

1995年のフレーバーホイールを使う

新しいフレーバーホイールに不足している部分は古いフレーバーホイールを使います。新しいものよりも項目が多く、コーヒーのポジティブなフレーバーを表すものとネガティブな汚染や欠点を表すものが分岐されています。Qグレーダーを学ぶ際はこれら全てを覚えなくてはなりません↓。
フレーバーホイール

1995フレーバーホイールは「Enzymatic」「SuggarBrowning」「DryDistillation」「AromaticTaints」に分かれており生豆由来、焙煎由来などから来るフレーバーが理解しやすい。内容はそのままに新しくデザインし直すことにしました。

オリジナルは横に並んでいて枠線が黒でしたが、縦に並べ替えて枠線を白ヌキに。カナモジカイ由来の英語のデザイン要素を持つカタカナ表記による日本語ローカライズ。デザインがかなりブラッシュアップできました↓。

2023flavorwheel1

欠点だけを集めたフレーバーホイール。詳細な分類ですがよくよく見ていくいとわかりやすいです。翻訳は精査したため精度は高いです↓。

2023flavorwheel2

このフレーバーホイールは、生豆から焙煎しコーヒーを抽出してカッピングするまでの流れに沿って理解できるダイアグラムなため、鑑定方法がわかっていれば非常に便利なフレーバーホイールかと思います。ただ、よほどのことがなければ出現しないネガティブな要素が多いです。

民間のフレーバーホイール

上記2つはコーヒーの国際的な公的機関であるSCA (米国スペシャルティコーヒー協会) によるフレーバーホイールですが、海外でも日本でも時々、オリジナルのフレーバーホイールを目にします。SCAでは民間のフレーバーホイールも認めていますので独自のフレーバーホイールをデザインすることも可能です。

Counter Culture Coffeeで配布しているデータを基に一から全部イラストレータで描き起こし日本語データ化しました。フレーバーは細かい要素で分岐されています↓。
CCCのフレーバーホイール

単語以外にも表現の強弱形容詞も表されており使い勝手が良い↓。
カウンターカルチャーコーヒーのフレーバーホイール

カナモジカイ由来オリジナルフォントで日本語イラストレータ化。昭和時代に現在の伊藤忠商事創始者伊藤忠兵衛などを中心として盛り上がった日本語から漢字をなくしてカタカナ表記に統一しようとする運動の中で生まれたカナモジカイフォント。スクエアな枠に収まる日本語を上下に強弱をつけたアルファベットのような形状を持つカタカナです。一つ一つはアンバランスなデザインでも単語や文章として配列された時に読みやすくなるフォントです。しかもデザイン性が優れています。

カウンターカルチャーコーヒーのフレーバーホイール

Counter Culture CoffeeのフレーバーホイールがSCAと異なるのは、要素が全てポジティブであること。欠点要素がありません。スパイス系やロースト系も普段のカッピングでよく使う用語が多様。特に「Soy Sauce」醤油など和風なフレーバーも並びます↓。

フレーバーホイール

ドライフルーツ系、チョコレート系、ベリー系も充実↓。

ベリー系

 

フローラル系も充実。リンゴと梨、スイカとメロンが同じフレーバーグループ。忠実にローカライズ&リデザインしています↓。

フレーバーホイール

その他フレーバーホイール

コーヒーの教科書などを出している海外の出版社のフレーバーホイール。酸味、甘味、塩味に加えて苦味、うま味まで網羅しています。ワインソムリエ資料ではこれに「コク」が加わり人間に知覚できる味覚とされますが、珈琲の場合は「ボディ」=「コク」と表現されマウスフィールカテゴリに分類されておりアストリンジェン(渋味)などと同列で示されます。ディスクリプションがないシンプルなホイールですがよく見ると温度帯の高低、抽出時間によるフレーバーの違いまでをも表しています↓。
flavourwheel

coffeemind製のシンプルなこのフレーバーホイールは、酸味、甘味、塩味、うま味が同列表示されています。日本語の旨味は英語化されています。

SCA公式コーヒーフレーバーホイール

総括として最新版の英語表記が一番使いやすいです。シンプルで色わけが直感的です。この公式フレーバーホイールを基準として補足的にその他のフレーバーホイールを参考にしています。
SCAフレーバーホイール


プラニフォリアとタヒテンシス
プラニフォリアとタヒテンシス
焙煎教室ではフレーバーホイールの活用法など。

フレーバーホイールの新アプローチ

珈琲はそのほとんどが水です。TDS1.5%の場合は98.5%が水。人間も水分が多いです。地球も水、全てが水で始まります。音は空気を振動させて伝わりますが水だとそれが目に見えて波紋を作っていきます。

「ああ、コーヒーの味の何と甘いこと!千のキスより素晴らしく、マスカット酒よりもっと甘い。コーヒーなしじゃやっていけない」とはバッハが1734年に作曲した風刺喜劇「コーヒーカンタータ」の中の一節。当時は、女性がコーヒーを飲むことは好ましくないという風潮があり、コーヒーを愛飲していたバッハがそれを皮肉ったものです。コーヒーが好きな娘と、珈琲をやめさせたい父親とのやりとりの中の言葉です。

開店当時よりザグリ珈琲でBGMとして流しているのはB&O小型スピーカーからのバッハやショパン、モーツァルトを中心としてピアノやクラッシックギター、弦楽などのクラッシック音楽です。アプリとスピーカー音源なので生演奏のようには感じられませんが音楽は、視覚から入る色や、口から入る味覚、鼻から入る香りなどの人間の感覚とは密接につながると考えているため流しています。

毎日フレーバーホイールを眺めているとエンザイマチックを構成する花群と果物群が美しく彩られていることに気がつきます。ではその色はどこから来ているのだろうと思いませんか?珈琲の白い花の色素(*)は?赤い実は何故?*白い花に色素はなく白く見えているのは泡です。

色彩の本

かつて色彩の要素が一目でわかるような資料をデザインしていたことがありました。主に美術デザイン系を中心とした色彩学範囲内です。そこに音や味覚を含めて組み合わせることにしました。近年、珈琲の他にコーヒーフレーバーホイールの元となったワインフレーバーに興味を持ちワインソムリエの勉強をしていたのですがアルコールが体に合わないため挫折しまして、珈琲の歴史とも密接に繋がる紅茶の世界に興味を持ち始め、産地、時期ごとに分岐し、比較して飲むようになりコーヒーとの飲み合わせ実験も始めました。

BlackTea
紅茶に興味を持った理由は、2016SCAコーヒーフレーバーホイールのエンザイマチック/フローラルフレーバーカテゴリーの始まりがBlackTeaであることも関係します。

珈琲と紅茶の比較
珈琲と紅茶それぞれのカッピングレギュレーションに沿い超硬水と超軟水での抽出比較カッピング。興味深い検証結果は教室などで話しています。

紅茶のフレーバーホイール
紅茶は色々な国や団体で個別にフレーバーホイールを作っているようです。

紅茶のフレーバー
紅茶を中心にしてそれぞれのフレーバーの言語表現を珈琲と比較してみました。

紅茶のフレーバー
紅茶には旨みやとろみなどの表現がありますがSCAが策定する珈琲言語には旨みがありません。ただ、独自にコーヒーフレーバーを作成しているラボには該当する表現があったりします。

紅茶の色
紅茶の表現には他に水色(すいしょく)がありオレンジ色だったり黄金色だったり美しいです。紅茶やワインでは渋みはポジティブ表現ですが珈琲ではネガティブ表現です。また、一部それぞれの表現でポジティブとネガティブが逆転しています。

色と音階、自然界の法則に沿ったフレーバーホイール
色と音階、自然界の法則に沿った人間の五感に沿ったフレーバーホイールは当店独自の研究によるもので誰にでも一目でわかるダイヤグラムとなっております。焙煎教室では珈琲以外にそんな話をしながら美味しいコーヒーを飲みます。

アロマキット

Le Nez du CaféとLe Nez du Vin
アロマキット

SCAフレーバーホイール
2024コーヒーフレーバーホイール
2024年現在、ファインロブスタのQグレーダートレーニングをベースにロブスタとアラビカが混在する注釈入りフレーバーホイールを完成させました。日本語は廃止し全て英語表記となります。