珈琲抽出用として考えられるミネラル成分の入った7通りの水が出てくる浄水設備を完成させました。
近年、コーヒーの競技会では、「カスタムウォーター(customwater)」で、コーヒーのフレーバーを最大限引き出すため、競技者自身で水を作成して競っているそうです。ICPコーヒーラボなどでも浄水器の複数の水を飲んでいるうちに自分でもカスタムウォーターを作ってみたくなりついに実現。
2025年2月現在で次の浄水を実現しています。
- 普通のエバーピュアCarbon浄水〜朝霞浄水場24番取水口杉並区域硬度相当
- 逆浸透膜RO純水
- イオン交換樹脂軟水
- ナトリウム水
- カルシウム水
- マグネシウム水
- 水素水
- シリカ水
もう既に何年も前から市販のRO水にカルシウムやナトリウムを混ぜる紹介されててセミナーもやってるから今更そんなことやっても古いと言われそうですが、そんなやり方ではなく浄水器としての設備記事ですから、既存のカスタムウォータ記事とは全く別物です。
また、試薬で作った水は珈琲マニアが趣味で飲むならともかく珈琲店として営業店舗として出せるのかはグレーなのではないでしょうか。海外から日本では認められていない器具類を輸入しようとした経験がありますが税関から検疫から超えなくてはならないハードルはかなり高いはずです。
私は過去に店舗設備施工会社での経験で水回りや冷凍冷蔵庫、水道周りなど店舗に必要な工事や水関連の会社勤務、水草水槽の店舗設営などをしていたことが今になって大変役に立ち実営業店舗で出せる複数の浄水設備を整えました!
↑浄水設備全貌。硬水(WHO)、純水、軟水、ナトリウム水、カルシウム水、マグネシウム水、シリカ水、水素水が出てきます。混ぜれば♾️。
作るきっかけは他にも。とある場所で日本では見かけない浄水器が置いてありナトリウム水や水素水が出てきたから。欲しいけど輸入するとなるとハードルは高いです↓。
日本の水道水は硬水?軟水?
硬水、軟水の定義
WHO(世界保健機関)の基準では、硬度が0~60mg/l 未満を「軟水」、60~120mg/l 未満を「中程度の軟水」、120~180mg/l 未満を「硬水」、180mg/l以上を「非常な硬水」としています。
日本は一般的には、硬度0~100mg/lを軟水、101~300mg/lを中硬水、301mg/l以上を硬水に分けられています。
ここ数ヶ月間首都圏近郊の自家焙煎珈琲店を巡っていまして水にフォーカスしたテイスティングしていましたが地域によってまちまちでした。
日本全域の水道水調査結果としては東京大学大学院総合文化研究科・教養学部[Mayumi Hori,Katsumi Shozugawa,Kenji Sugimori,Yuichiro Watanabe]によるScientific Report/A Survery of monitorinng tap water hardness in Japan and its distribution patterns内のマップを引用させていただきます。
日本の水道水の硬度とその分布状況の監視に関する調査
2017年から2020年にかけて日本全国665地点の水道水を採取し、水道水中の主要陽イオン(カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム)と硬度を測定し、都道府県単位での水質分布を示したマップ。
日本と世界の水道水硬度グーグルマップ。
日本全国とインドアジアヨーロッパなどの水道水の硬度分布グーグルマップ
注)東京区部でも港区南青山2丁目付近、異常な軟水を示している部分がありこれは取水場から判断してあり得ない数値のためおそらく検体の水は水道蛇口から出てきているとはいえ浄軟水設備によるものと思われます。
硬度分布グーグルマップでは東京の場合は人口が多いため区域によって浄水場も取水口も多数分岐しており網羅されていない地域もあります。都の水道局ページで季節ごとの正確な測定値が公開されています。こちらの珈琲の水・川の源流をたどる記事にまとめています。
カシオによる水のミネラル含有量から水の硬度を計算ページ。計算すれば正確な硬度が算出されます。
水の硬度計算
以上、東京でも関西でも硬水の地域もあれば軟水の地域もあるのがおわかりいただけたでしょうか?
浄水器施工の道のり
色々調べ始めているうちに水の化学についてわかってきまして作り上げました。完成した浄水器の30秒ショート動画も作ってみました。
↑珈琲マニアや関係者がよくやってるカスタムウォーターのようにアクアコードなどの試薬類を使わず珈琲店の営業として出せる浄水なのです。
店内に浄水解説パネルも作ったのですが化学式や用語だらけになって専門家でないとわからなくなってしまったのでミニ電光掲示板に原稿用紙2枚分でわかりやすくまとめています。
浄水器はタンクハウジングのみエバーピュアなどの既製品を流用しました。
濾過材は別にオリジナルで作っていまして入出水ストレーナーは水道管用の塩ビパイプをDIY。
接続ジョイントはエアー圧縮工具用の金具を流用。濾過材メンテナンス時に簡単に取り外しができるようにしているところが特徴。水を吸い込む部分は水道蛇口取り付け用ミニ浄水器を利用。
この1ヶ月間ホームセンターには少なくとも20回以上通いました。以前、エバーピュアを施工した頃は水道部品が充実した成城のクロガネヤまで通っていたのですが残念ながら閉店してしまったためコーナンの各店舗へ。水道設備充実でなんでも揃います。ネットで買って失敗した細かいパーツなども全て解決。
取り付けては外しの連続で無駄な部品もたくさん買ってしまいました(泣)が、試行錯誤のおかげで水周り工事の腕と工作スキルが上がりました。浄水施工でお悩みの店舗さんいらっしゃいましたら是非ご相談ください。
水圧計の組み立て。異径バルブの接続ジョイントは一番水漏れが心配される部分。
狭いスペースに、小型とはいえ水が満タンに入ったタンクが複数となると二桁キロの重量になります。しっかり支えられるよう工作してます。
細かいですが取り付けた浄水器タンクを照らすためザグリ加工。貫通させずに木に溝を彫るのを「ザグリ」と云います。店の名の由来の一つでもあります。テープLEDを埋め込みます。光源が直接視界に入らないよう。
電子工作と木工作業と水道施工を同時進行で全部できる人はなかなかいないのではと思います?!
LEDの光を効率よく反射させるため内部はラッカーで銀色に。店内の埋め込み照明はほとんど全てこの加工をしています。
こんな感じで間接照明となります。
水が主役
美しく照らされたステンレスタンクたち。当店の影の主役である水。まるでミニプラント。
上方向にはタンクハウジングを照らすダウンライトも設置。目指したのは焙煎機に負けない美しさ。明るいのでメンテナンス工事もしやすくなります。タンクはそれぞれ独立した止水弁と開水弁ですので個別にろ材交換可能。
水は科学の力
私は文字に特化したデザイナーでもありまして数多くの古い書物をコレクションしています。1910年発行今から115年ほど前の化学の教科書の中に水や珈琲の記述を発見しまして、含有している鉱物や珈琲の酸やカフェーンまでもが詳細に測定値として書かれています。
現代のような優れた計測機器のなかった時代はどうやって測っていたんでしょう?
カルシウム、マグネシウムイオンを計測するには?
鉱物などの含有量測定はおそらく試薬類を使うところは変わらないと思います。当店ではカルシウムはシュウ酸フェノールスルホンフタレイン色素を遊離カルシウムイオンと結合させ生成する青色の複合体による色調変化を測定します。マグネシウムはマグネシウムイオンと特異的に反応し着色複合体を形成するカルマガイド色素を利用して科学の力で計測します。
こちらに日本語でわかりやすく解説している資料を見つけました!
水道水の硬度分析(総硬度・カルシウム硬度・マグネシウム硬度)
浄水器から出てくる水の計測結果です↓。
イオン交換樹脂↓。
濾過は化学です。薬棚もLEDで美しく演出。
浄水に関しては詳細でわかりやすい解説パネルも作っています。
ケトル置き場湯沸かしスペースは昼光色〜電球色〜高演色からRBG様々な色に変化させることが可能。珈琲焙煎や抽出にとって水はもっとも重要です。ここに光を当てねばなりません。
検証
7通りの蛇口からの水の水質検査を始めました。水素水もこの通り蛇口から出てくるようにしました↓。
簡易測定中の水↓。
カスタムウォーターで珈琲の風味を引き出す方法
浅煎り、中煎り、深煎りに分けてそれぞれの焙煎度合いごとの水の鉱度バランス実験が実現!!。
主題から結論まで長くなりましたが、一つのコーヒーが何パターンもの水で抽出できそれぞれのフレーバー(風味)「酸味」「甘味」「苦味」「旨味」を相当するミネラルによって引き出すことができるようになるのです。
硬度分析中の水↓。
当店の研究設備では珈琲水の主要成分を計測しております。
あなたの珈琲店の水、大丈夫ですか?水質調査サービスのご案内
水には何が入っているかはわからないといったことをよく聞きますがご自分の珈琲店の水が知りたくありませんか?珈琲抽出水の些細な違いがわかる方、良質な珈琲焙煎店向けに特化した水質測定サービス始めました(どの水を飲んでも違いがわからない人は不可)。
サービスの特徴
食品工場や公的機関向けの水質検査分析センターのように多項目の物質検査での二桁万円ではなく「珈琲抽出に必要な項目に絞っての解析」ですので個人珈琲店でも利用可能な価格設定です。関西地方など遠方の方を除いてネットや電話、メールでのお問い合わせはお断りします。店舗に直接来店いただきご相談ください。その際、事前に簡単なウォーターセンサリーテストがあります。
解析方法は前述のカルシウム、マグネシウムイオンを計測するには?を参照ください。
申し込みは直接店舗で。
珈琲豆の卸先店舗さんへは水質検査無償サービスも行っております。