フジローヤルの焙煎機をインバータ化してドラムと排気量アップ!
4年ほど使っている富士ローヤルの1kg機R-101を譲渡することになりまして手元にあるうちにやってみたかったインバータ化改造の記録です。2年前に排気プローブとアルチザン接続、メンテナンス簡略化改良は行なっていましたが、今回施すのは次の2項目。
- 排気風量可変化
- ドラム回転可変化
インバータとは?
インバータとは、交流(AC)の電圧や周波数を自在に変えることができる回路や装置です。家電製品や産業機械など、幅広い分野で使用されています。元の原理は天才科学者ニコラ・テスラによる発明です。
よくインバータとコンバータを混同してしまうので書いておきますが、コンバーターは交流電流から直流電流に変換する装置であり、順変換装置とも呼ばれます。 次の写真のように店内には5箇所、コンバータが取り付けてあります。これはコンセントからの交流を直流に変えて主にLED照明をコントロールしています。
一方、インバーターは直流電流から交流電流に変換する装置であり、逆変換装置ともいいます。実際にはコンセントからの交流を直流に変えて更に三相交流に変えて周波数も変更できるという便利な装置です。
直流と交流の違い
直流はDC(Direct Current)、交流はAC(Alternating Current)です。コンセントは交流です。スマホなどに充電するときはACアダプターを介して交流を直流に変換します。
周波数の違いによる日本製の焙煎機
日本は西と東で60Hzと50Hzと周波数が異なるため例えば富士ローヤル製の焙煎機などは西日本と東日本では仕様が別です。西日本の方が関東に比べて2割ほど速くモーターが回るのです。西日本仕様の焙煎機を東京で使うとドラム回転が2割遅くなり、東日本仕様の焙煎機を大阪で使えばドラムが2割高速回転します。大阪で使ったことがありませんが、たぶん、始動時のスイッチをオンにしたブザー音も音階が2-3音程が高いはずです。富士ローヤルの焙煎機で同じドラム回転数にするにはプーリーとVベルト交換が必要になります。といっても自分で交換すれば部品代は数千円程度で済みますけど。
釜回転や排気風量可変の海外製焙煎機
GIESENやBESCAなど海外製の焙煎機は、必ずと言っていいほど釜回転数を変えられたり、排気ファンの調整が可能となっています。毎年SCAJの珈琲イベントに行くとドイツのプロバットやオランダのギーセンなどの老舗ブランドが目立っていましたが最近では韓国製やトルコ製などの高性能焙煎機も見かけるようになりました。トルコのBESCAは1kgと小型ながら詳細設定可能。次の写真は2024年のSCAJショーで撮影させていただきました。トルコには他にもドイツの老舗ロースターが参考にしたとも云われるハスガランテなどの焙煎機メーカーもあります↓。
BESCA内部は配電盤がぎっしり詰まっていました↓。
ギーセンもAUTO機では回転数、排気ファンとも可変可能です。一度慣れてしまうと日本製焙煎機には戻れません↓。
そこで、富士ローヤル焙煎機をインバータ化してドラム回転と排気風量可変化改造を始めたわけです。
富士ローヤルは堅牢性が高く、故障も少なくシンプルな焙煎機。年式が新しめの機種ではクーリングモーターも付いており、計3つの独立したモーター駆動です。
インバータ化のメリット
50Hz、60Hz関係なく機械を制御できる
インバータがないと周波数の変更が出来ない為、ギヤやプーリーサイズ調整を行うなど機械的な変更が必要となります。インバータを使うことにより周波数帯が違う地域に移設しても機械的な調整が不要でそのままマシンを使うことができます。豆排出時には排気ファンを爆風モードにすれば急速冷却も可能となります。焙煎終了時の冷却は大事ですからこれが一番のメリットかもしれません。
排気風量テスト成功
以上、インバータ化のおかげで2025年2月半ば現在の実装試験ではなんと2900回転まで回りギーセン以上の爆速マシンに変貌しています。一部のロースターの間では富士は固定マシンだからという理由で敬遠されていますが、海外製の小型機が撹拌用のクーリングモーターは付いていない割にはかなりの高額で国産ナナハンのように撹拌クーリングモーターは付いていないのですから富士の方が優秀だと思います!
R-103,R-105の3キロ機5キロ機に関しても釜回転、排気風量とも改造可能です。本体には大掛かりな改造を加えず、いつでも元に戻すことができる工事になります。多分ハマ珈琲製も改造可能です。
次のように本体には穴あけ加工などの手を加えずインバータ配電盤を取り付けています↓。
ドラム回転も海外勢のようにというか更に高回転化も可能です。電気に詳しければわかりますが釜回転可変手法はいくつかあります。私はベストな実装にて進めています。
対象者
プロ向け、フジローヤルでインバータ化したい方、高度な焙煎をしたい方向けです。可変要素が増えますので焙煎理論を充分理解している方、台湾のJAKE HU氏の焙煎理論を学んだ方などにも向きます。焙煎初心者は操作要素が増えすぎるため向きません。
注意事項
- 改造は比較的新しい年式の機種に限ります。排気ファンインバータ工事の場合は排気ファンが汚れていないことが絶対条件です。新品歓迎します。インバータ工事は本体に大掛かりな改造はしませんのでご安心ください。
- 部品などの詳細見積もりは出しませんので店舗にお越しいただき直接交渉ください。焙煎機の写真を見せていただき状態によって概算見積もりします。
- 焙煎機内部が汚れすぎてネジが固着して外せないなど状態によってはお断りする場合がございます。内部の大掛かりな掃除作業が発生する場合は日程を分けてお客様自身で掃除していただきます。
工期スケジュール
申し込み時点から1ヶ月間は部材調達、スムーズに工事ができるように事前現場検証が必要です。工事は設置場所へ出向いての作業で1日を目安としてください。交通旅費は別料金となります。
価格
阿佐ヶ谷のザグリ珈琲店舗で直接交渉ください。ネットや電話での問い合わせ不可。釜回転、排気風量、排気温度増設など希望の工事箇所によって異なります。担当者不在の場合がございますので確実に相談したい人はアポイントを取ってください。当方は自家焙煎店で珈琲豆販売と喫茶がメイン業務です。改造専門業者ではありませんので金額相談や見積もりのみはお断りします。
改造風景のリアルタイムご紹介。個人インスタグラムにて日々の改造実験を公開しています。試行錯誤でして無駄にしたモーターなどの買い物類はかなりの量です↓。
https://www.instagram.com/hi.ohtani/
お問合せ
お問い合わせは阿佐ヶ谷のザグリ珈琲/大谷まで
よくある質問
Q.インバータを買えばできますか?
A.できますがこのページで説明しているようにインバータは単なる部材です。ACアダプターを買えばできますか?と言っているようなものでインバータ以外の要素が大半を占めます。
Q.部品の型番だけ教えてください。
A.オリジナルで加工している部分もありますので非公開とさせていただきます。当方は富士ローヤルユーザーへ向けた改造を有償にて行うサービスでございます。
Q.いくらですか?
A.部品代、技術ノウハウ料、加工費、取付設置人日作業費、旅費交通費などの合計+消費税となります。
*当方の改造内容詳細は全て非公開です。
*排気センサー増設&ローストプロファイラー化工事は排気管部への孔あけ工事が発生します。
*ローストプロファイラーアルチザンのパソコンへの接続や使い方は範囲外です。必要な方へは別料金にて承ります。
*ガスバーナー交換などガス関連部材の改造は基本的には行なっておりません。富士ローヤル社でもガス部材に関しては販売はしておらず本社での組み付け対応のみです。