まず最初に結論を申し上げますと
WHO定義前提で
東京都の水は「硬水〜非常な硬水」です。
日本の基準では
東京都の水は「中程度の硬水」です。
東京の水が軟水だと思っている人はよーくお読みください。TDSは硬度ではありません!
ちなみにこれから書くことは、東京都の区部の話です。武蔵野、多摩地域は水源が異なりますので4/27のBLOG記事【検証】東京都の水道水は軟水?をお読みください。
まずは東京都水道局のサイトでお住いのエリアの水道水の硬度を調べる方法を紹介します。
東京都水道局に、配水系統~ご家庭の水道水情報ページが用意されています。
https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/suigen/keitou
❶お住いの区域丁目をプルダウンメニューで選び
❷検索をクリック
❸給水栓をクリック
お住いの地域、店のある場所の水道の2枚の水質資料PDFがダウンロードできます。2枚目の資料の赤枠で囲んだ部分に「カルシウムイオンとナトリウムイオン」の量が表示してあります。
通常、**水の「硬度」**というのは、
- カルシウムイオン(Ca²⁺)と
- マグネシウムイオン(Mg²⁺)
の含有量をもとに、一定の換算式で計算するのが世界標準です。
たとえば国際基準(WHOや米国EPA基準など)では、
- 硬度 (mg/L as CaCO₃) = Ca × 2.5 + Mg × 4.1
というふうに、炭酸カルシウム(CaCO₃)に換算した値で表記するのが普通です。
硬度計算のできるCasioの便利なサイトもあります。
カシオの硬度計算サイト
ところが、
日本(特に東京都の水道局)では、
「カルシウム硬度+マグネシウム硬度=硬度」と単純に加算しているんです。
(炭酸カルシウム換算していない)
つまり、例として令和6年度4〜6月期の杉並区阿佐谷北の水道水
- カルシウム硬度44.1 mg/L
- マグネシウム硬度14.7 mg/L
なら単純に 44.1 mg/L + 14.7 mg/L = 58.8 mg/L を「硬度」と表示している。この数値はなら確実に軟水となります。
ということは、ペットボトル「キリンの軟水」2024年度の硬度「58mg/L」(WHO基準)と東京都杉並区の水道水の硬度58.8 mg/Lはほぼ同じ数値になってしまうのがわかりますか?
キリンの軟水は100mlあたりの表記なので1リットル換算で「カルシウム13mg/L、マグネシウム6.2mg/L」です。
東京都杉並区阿佐谷北の水道水は「カルシウム44.1mg/L、マグネシウム14.1mg/L」です。
これをグローバル基準の計算式に当てはめると、「170.7mg/L」の硬水(WHO基準)になるのです!
前述の赤枠内水質検査結果を拡大して注釈しました↓
↑2025年のキリンの軟水は若干硬度が下がりました。49mg/Lです。
【なぜ東京都(日本)ではこうしているか?】
- 日本では、飲料水基準において「硬度」の正確な換算法があまり厳格に求められていない。
- 実際には水質基準項目でもないので、”わかりやすさ重視”で単純加算方式を採用している。
- そして、日本の水はもともと硬度が低い(軟水寄り)なので、細かい換算をしなくても大勢に影響がなかった。
という歴史的な経緯があるそうです。
硬度基準値
分類 | WHOの基準 | 日本の一般的な基準 |
---|---|---|
軟水 | 0〜60 mg/L | 0〜100 mg/L |
中程度の硬水 | 60〜120 mg/L | 100〜300 mg/L |
硬水 | 120〜180 mg/L | 300 mg/L以上 |
非常に硬水 | 180 mg/L以上 | – |
まとめ:東京都杉並区阿佐谷北1丁目の硬度表示例
項目 | 4-6月 | 7-9月 | 10-12月 |
---|---|---|---|
カルシウム | 44.1mg/L | 53.8mg/L | 47.7mg/L |
マグネシウム | 14.7mg/L | 18.1mg/L | 16.4mg/L |
東京都基準 単純合算 |
58.8 mg/L 軟水 |
71.9 mg/L 軟水 |
64.1 mg/L 軟水 |
WHO基準 係数換算 |
170.7 mg/L 硬水 |
208.9 mg/L 非常な硬水 |
186.6 mg/L 非常な硬水 |
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