2025年05月05日 22:27最新の情報です

珈琲の酸について

珈琲の酸について

珈琲の味のポイントとなる代表的な酸である「クロロゲン酸、トリゴネリン、キナ酸」などについて水の硬度と抽出を交えて解説します。

試薬

クロロゲン酸の種類

クロロゲン酸はただ単にクロロゲン酸として扱われますが化学的にはいくつかの「異性体(アイソマー)」が存在し、特に「モノクロロゲン酸(Monochlorogenic acids)」と「ジクロロゲン酸(Dichlorogenic acids)」は、化学構造の違いによって分類され、珈琲の酸としては別の特徴を示すためここでは区別して説明します。

🔬 クロロゲン酸分類(Chlorogenic Acids)

クロロゲン酸は「ヒドロキシ桂皮酸(カフェ酸など)」と「キナ酸(Quinic acid)」がエステル結合した構造をもつ化合物群の総称です。

🧪 ① モノクロロゲン酸(Monochlorogenic Acids)

モノクロロゲン酸(Monochlorogenic Acid)の代表成分である:

5-カフェオイルキナ酸(5-Caffeoylquinic acid)

が、いわゆる「モノクロロゲン酸」として知られています。

🔬 化学式と基本情報

項目 内容
化学名 5-Caffeoylquinic acid(5-CQA)
分子式 C₁₆H₁₈O₉
分子量 約 354.31 g/mol
構造特徴 カフェ酸 + キナ酸がエステル結合した構造
酸性 多価フェノール酸で、酸味に寄与

🧪 構造の概要

Caffeic acid(芳香環+ヒドロキシ基)
↓ エステル結合
Quinic acid(多価アルコール・酸性)

この組み合わせで、**コーヒーの「フルーティな酸味」や「クリーンな明るさ」**を作っているわけです。

☕ 味への影響

  • 浅煎り:多く残存 → フルーティ、鮮やかな酸味
  • 中煎り:分解し始め → キナ酸やカフェ酸へ分かれ、後味に移行
  • 深煎り:ほぼ分解 → 酸味減少、苦味・香ばしさへ移行
  • 1分子のカフェ酸(または他のヒドロキシ桂皮酸)が1箇所に結合
  • 一般に「5-Caffeoylquinic acid(5-CQA)」と呼ばれるものが最も多い
  • コーヒー豆中では最も多く含まれるクロロゲン酸(全体の約50%以上)
  • 完熟豆に含まれる

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特徴:

  • 熱に比較的安定(ただし220℃以上で分解)
  • 味:ややフルーティで渋味が少ない
  • 主に浅煎りコーヒーの酸味・明るさに寄与

🧪 ② ジクロロゲン酸(Dichlorogenic Acids)

ジクロロゲン酸(Dichlorogenic acid)は、クロロゲン酸(chlorogenic acid)類の一種で、「カフェ酸が2つ結合した構造」です。以下に説明します。

✅ ジクロロゲン酸(Dichlorogenic acids)の代表例

3,5-ジカフェオイルキナ酸(3,5-Dicaffeoylquinic acid)

項目 内容
化学名 3,5-Dicaffeoylquinic acid
分子式 C₂₅H₂₄O₁₂
分子量 516.45 g/mol
構造 キナ酸にカフェ酸が2つ結合(3位と5位)
酸味・機能性 より強い酸味、抗酸化力も高め

🧪 構造イメージ

Caffeic acid + Quinic acid + Caffeic acid
(芳香酸) (多価アルコール) (芳香酸)

二重エステル構造で安定かつ大きめの分子。

☕ 味や焙煎への影響

焙煎度 ジクロロゲン酸の状態 味への影響
浅煎り 多く残る 明確な酸味、やや強めの渋みも
中煎り 徐々に分解(カフェ酸やキナ酸へ) 酸味がまろやかに、香ばしさが出てくる
深煎り ほぼ分解 酸味はほぼ消え、苦味・香り主体にシフト

特徴:

  • 熱に対してより不安定で、焙煎中に分解しやすい
  • 2分子のカフェ酸キナ酸の別の位置に2つ結合
  • 例:3,5-diCaffeoylquinic acid(3,5-diCQA)など
  • 味:苦味や収斂味がやや強く出る
  • 分解生成物が深煎りのボディ感や苦味に関与
  • 未熟豆に含まれる

☕ モノクロロゲン酸とジクロロゲン酸の味と焙煎の違い

種類 焙煎耐性 味の印象 主に寄与する焙煎度
モノクロロゲン酸 比較的安定 酸味、明るさ、クリーン 浅煎り〜中煎り
ジクロロゲン酸 分解しやすい 渋味、苦味、コク 中深煎り〜深煎り

🎯 実践的なポイント

  • 浅煎りを狙うときは、モノクロロゲン酸の残存を意識
    → クリーンで華やかな酸を引き出すプロファイル設計がカギ。
  • 深煎りでは、ジクロロゲン酸の分解由来の苦味が味の骨格
    → 焦がさずに“まろやかに苦い”仕上がりを狙うと◎。

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🧪 トリゴネリンとは?

トリゴネリン(Trigonelline)の化学式は:

C₇H₇NO₂

🔬 詳細情報

項目 内容
化学名 1-Methylpyridinium-3-carboxylate
分子式 C₇H₇NO₂
分子量 約 137.14 g/mol
構造 ニコチン酸(ナイアシン)のN-メチル化体

**トリゴネリン(Trigonelline)**は、コーヒーに含まれるちょっと地味だけど超重要な成分のひとつ。焙煎や抽出によっていろんな変化を起こし、味や香りに意外と大きく影響します。

  • アルカロイドの一種(ニコチン酸のメチル化体)
  • 生豆に約 0.6〜1.2% 含まれている
  • 水溶性なので、抽出時にしっかりカップに出る

🔥 焙煎による変化

✅ 200〜250℃あたりで熱分解

トリゴネリンは焙煎の加熱により以下の成分に変化します:

  1. ニコチン酸(ナイアシン / ビタミンB3)
  2. ピリジン類(独特の香ばしさ、コーヒーらしい香り)
  3. その他の揮発性アルカロイドや芳香族化合物

➕ 味と香りへの影響:

成分 味・香りの印象 焙煎との関係
トリゴネリン(未分解) 軽い苦味、クリーンな口当たり 浅煎りに多く残る
ピリジン類 ロースト香、香ばしさ、ナッツ香 中深煎り以降で増加
ナイアシン 味には影響しないが栄養価あり 中深煎り以降に生成される
焙煎度 トリゴネリンの役割 味への影響
浅煎り 多く残る → 苦味が少なくクリーン 爽やか、雑味が少ない
中煎り 分解が進み香りに貢献 香ばしさ、バランスよく
深煎り ほぼ分解 → 香りの主成分へ 焦がし香、ローストナッツ感強め

🎯 焙煎・抽出の実践ポイント

  • 浅煎りで雑味の少ないカップを狙うなら、トリゴネリンの残存を意識。
  • 香り豊かな中深煎り~深煎りでは、ピリジン由来の香りがポイントに。
  • 抽出時に過度な高温を避けることで、ピリジンの過剰抽出による刺激臭を防げる。

✍️ ヒント

  • 「**トリゴネリンは“苦くないアルカロイド”**と覚えてください」
  • 焙煎すると“香りの素”に変身します
  • 浅煎りでの透明感と深煎りでのロースト香、両方に関わる不思議な成分です

🔬 キナ酸とは?

キナ酸(Quinic acid)は、コーヒーの味や香り、そして**口当たり(アフターテイスト)**に影響する重要な有機酸のひとつです。

キナ酸(Quinic acid)の化学式は:

C₇H₁₂O₆

🔬 基本情報

項目 内容
分子式 C₇H₁₂O₆
分子量 192.17 g/mol
IUPAC名 (1S,3R,4S,5R)-1,3,4,5-Tetrahydroxycyclohexane-1-carboxylic acid
分類 ヒドロキシカルボン酸(有機酸の一種)
味の特徴 軽い酸味+やや渋み
出現 主にクロロゲン酸の熱分解産物として出現

🧪 構造の特徴

  • シクロヘキサン骨格(六員環)
  • 水酸基(–OH)が4つ
  • カルボキシル基(–COOH)が1つ

つまり、高い親水性酸性で、コーヒー抽出時にもよく溶け出します。

☕ コーヒーでの役割

要素 影響
焙煎 クロロゲン酸の熱分解でキナ酸が生成
味わい 酸味に輪郭やシャープさを与える
過抽出時 渋みや収斂感の原因にもなりうる
深煎り時 分解が進んで減少し、苦味主体に切り替わる

🎓 ポイント

  • 「キナ酸は**“酸の芯”をつくる下支え役**です」
  • 「シャープな酸味とドライな後味の裏には、たいていキナ酸がいます」
  • 「浅煎り×高温抽出で“酸っぱ渋い”と感じたら、キナ酸の主張が強いかも」
  • 単体ではあまり注目されませんが、実は クロロゲン酸の一部です
    →「カフェ酸 + キナ酸 = クロロゲン酸」
  • 焙煎中にクロロゲン酸が分解されることで、キナ酸が遊離して現れてきます。

🔥 焙煎中の変化

  • クロロゲン酸はおおよそ **170〜230℃**の間で熱分解され、
  • **カフェ酸(Caffeic acid)キナ酸(Quinic acid)**に分かれます

\ 焙煎が進むほどキナ酸は「自由に」なっていく! /

☕ 味への影響

✅ 浅煎り〜中煎りでのキナ酸の特徴

要素 影響
酸味の中にほのかな渋み・えぐみ
口当たり 酸の輪郭を与え、後味のキレに貢献
余韻 ややドライで、フローラル系の明るさをサポート

→ 単体ではあまり強い風味はないけれど、「酸の芯」や「味の輪郭」を支える重要な存在です。

😬 キナ酸が悪目立ちするケース

  • 浅煎りでの過抽出(湯温が高すぎ、または時間が長すぎ)
  • 軟水 × 高温抽出などで収斂味や舌の裏に残る渋みが出やすくなる

→ これは「クロロゲン酸由来のキナ酸が強調された状態」です。

✅ 抽出におけるコントロール法

条件 キナ酸の出方 味の変化
湯温高すぎ 過剰に出る 渋み・エグミが増す
湯温低め 適度に抑えられる まろやかな酸、透明感が出やすい
軟水使用 キナ酸がやや強調 酸が前に出る
硬水使用 酸がまろやかに感じる バランス良い印象に

✍️ アドバイス

  • 「**キナ酸は酸味の“骨格”**を作ってくれる成分です」
  • 浅煎りが“酸っぱくてイヤ”な人は、キナ酸の出しすぎが原因かも
  • 適温・適水で抽出すれば、キナ酸が美しい酸の輪郭に変わります

🧪 KCl(塩化カリウム)とは?

**KCl(塩化カリウム)=ポタジウム(カリウム)**は、抽出時に意外と重要な“味の裏方”として働いています。地味だけど、コーヒーの「まろやかさ」や「苦味の調整」に関わってきます。

  • カリウム(K⁺)と塩素(Cl⁻)の化合物
  • 水に溶けて完全に電離し、K⁺イオンとして作用します
  • 天然のミネラルウォーターや、焙煎豆のミネラル成分にも微量含まれます

☕ カリウム(K⁺)がコーヒーに与える主な影響

項目 影響内容
味のまろやかさ ナトリウム(Na⁺)ほど塩味を強調せず、苦味を和らげる
電気伝導率の上昇 TDSやEC値が高くなる要因になり、抽出効率にも関与
pHの微調整 酸性側にわずかに傾けることがあり、酸の輪郭を丸く感じさせる

🔍 味わいの具体例(焙煎や抽出での違い)

シチュエーション K⁺の作用
硬水で抽出(Mg²⁺+K⁺) 酸がやわらかく丸く感じる
軟水でKCl添加(人工ミネラル水など) ナトリウムよりも自然な塩味感、雑味が少ない
焙煎豆の表面にK⁺が多い(中深〜深煎り) コクのある苦味、角の取れた余韻

 

🔥 焙煎によるK⁺の動き

  • カリウムは揮発しないので、焙煎後も豆に残る
  • 焙煎が進むと細胞壁が壊れてK⁺が抽出されやすくなる
  • 深煎りのコーヒーで抽出液のTDSが高くなる一因

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💡 ポイント

  • 「**K⁺は苦味をやさしくしてくれる“味の中和剤”**のような存在です」
  • 軟水でもKClをうまく使えば、味の芯を持たせることができます
  • Mg²⁺が“シャープさ”なら、K⁺は“まろやかさ”担当です」

まとめ

珈琲はpH5前後の酸性の飲み物です↓

珈琲はpH5

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