日本は軟水と言われます。果たして本当でしょうか?当店では珈琲や焙煎の教室もあり全国各地から学びに来る人がいますが水道水をペットボトルに入れて持ってきてもらいます。関西地方は確かに軟水の地域が多いです。しかし、東京はどうでしょうか?東京のコーヒー店の人と話をする機会もありますがほとんどの人は正確に答えることができません。そして東京の水は軟水だという人がいます。
当店の水の教室ではコーヒー業界の有名人が書いている本と違うことを言っているそうです。有名人に比べると当店は圧倒的に知名度が低く当方が出鱈目を吹聴していることになりかねないためこのページにしっかりまとめました。有名人もあながち出鱈目を言っているわけでもなく全ては公的機関の基準値に原因があるのです。度量衡に硬度換算を追加して欲しいくらい。
東京の水が軟水だと思っている人はよーくお読みください。勘違いを修正するいい機会です!
ちなみにこれから書くことは、東京都の区部の話です。武蔵野、多摩地域は水源が大きく異なりますので4/27のBLOG記事【検証】東京都の水道水は軟水?をお読みください。
まず最初に結論を申し上げますと
WHO定義前提で
東京都の水は「硬水〜非常な硬水」です。
日本の基準では
東京都の水は「中程度の硬水」です。
おまい何言ってんの?有名な●×COFFEE ROASTERの人や●●さんは軟水だって言ってたぞ!出鱈目ぬかすなーという人もいるかと思いますが、なぜなのかはこれから説明します。
まずは東京都水道局のサイトでお住いのエリアの水道水の硬度を調べる方法を紹介します。
東京都水道局に、配水系統~ご家庭の水道水情報ページが用意されています。
https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/suigen/keitou
❶お住いの区域丁目をプルダウンメニューで選び
❷検索をクリック
❸給水栓をクリック
お住いの地域、店のある場所の水道の2枚の水質資料PDFがダウンロードできます。2枚目の資料の赤枠で囲んだ部分に「カルシウムイオンとナトリウムイオン」の量が表示してあります。
通常、**水の「硬度」**というのは、
- カルシウムイオン(Ca²⁺)と
- マグネシウムイオン(Mg²⁺)
の含有量をもとに、一定の換算式で計算するのが世界標準です。
たとえば国際基準(WHOや米国EPA基準など)では、
- 硬度 (mg/L as CaCO₃) = Ca × 2.5 + Mg × 4.1
というふうに、炭酸カルシウム(CaCO₃)に換算した値で表記するのが普通です。
ところが、
日本(特に東京都の水道局)では、
「カルシウム硬度+マグネシウム硬度=硬度」と単純に加算しているんです。
(炭酸カルシウム換算していない)
つまり、例として令和6年度4〜6月期の杉並区阿佐谷北の水道水
- カルシウム硬度44.1 mg/L
- マグネシウム硬度14.7 mg/L
なら単純に 44.1 + 14.7 = 58.8 mg/L を「硬度」と表示している。この数値は確実に軟水となります。
そうすると例えばペットボトル「キリンの軟水」の硬度「58mg/L」(WHO基準)と東京都杉並区の水道水の硬度はほぼ同じことになってしまいます。キリンの軟水は100mlあたりの表記なので1リットル換算でカルシウム13mg/L、マグネシウム6.2mg/Lだから水道水より少ないはずだぞ?いったいどういうこと??
しかし実際は東京都杉並区阿佐谷北の水道水は、
グローバル基準の計算式に当てはめると、「170.7mg/L」の硬水(WHO基準)になるのです!軟水なんてもんじゃない。マスコミはピーファスなんて騒ぐ前にこの硬度をなんとかしろと言いたいです。ペットボトルのミネラルウォーター硬度表示と見比べるとぐちゃぐちゃじゃないか!
前述の赤枠内水質検査結果を拡大して注釈しました↓
【なぜ東京都(日本)ではこうしているか?】
- 日本では、飲料水基準において「硬度」の正確な換算法があまり厳格に求められていない。
- 実際には水質基準項目でもないので、”わかりやすさ重視”で単純加算方式を採用している。
- そして、日本の水はもともと硬度が低い(軟水寄り)なので、細かい換算をしなくても大勢に影響がなかった。
という歴史的な経緯があるそうです。
硬度基準値
分類 | WHOの基準 | 日本の一般的な基準 |
---|---|---|
軟水 | 0〜60 mg/L | 0〜100 mg/L |
中程度の硬水 | 60〜120 mg/L | 100〜300 mg/L |
硬水 | 120〜180 mg/L | 300 mg/L以上 |
非常に硬水 | 180 mg/L以上 | – |
まとめ:東京都杉並区阿佐谷北1丁目の硬度表示例
項目 | 4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 分類 |
---|---|---|---|---|
カルシウム | 44.1mg/L | 53.8mg/L | 47.7mg/L | |
マグネシウム | 14.7mg/L | 18.1mg/L | 16.4mg/L | |
東京都基準 単純合算 |
58.8mg/L | 71.9mg/L | 64.1mg/L | 軟水 |
WHO基準 係数換算 |
170.7mg/L | 208.9mg/L | 186.6mg/L | 硬水〜非常な硬水 |
コーヒーはそのほとんどが水です。関西地方、水の柔らかい環境でコーヒーを飲んでいる人が東京に来ると水が硬いことに気がつきます。お風呂でのシャンプーのゴワつきにも気がつきます。水源を同じくする首都圏埼玉や千葉には東京よりも水の硬い地域もあります。そのため関西と東京では焙煎度合いは水に合わせて変えなくてはなりません。東京のコーヒー店の人も関西や名古屋に行くとこの水の違いと焙煎度に気がつくはずです。
ところが公的機関が東京の水は「軟水」と発表しているのですから訳が分からなくなるのです。確かに東京都が掲示している水の硬度は間違いなく軟水ですが、上の表で示すように実際はその数値は大きくかけ離れているのです。
水質は焙煎にも大きく関わってきますので特にロースターは水の硬度知見は必須です。

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