コーヒーイベント

【焙煎大会 準優勝】ギーセンローストコンペで見えたプロ焙煎の極意

Giesen Roast Rumble 2025

世界的焙煎機メーカー「GIESEN」の日本代理店であるギーセンジャパン主催のローストコンペティション『Giesen Roast Rumble 2025』にて、ザグリ珈琲オーナー・Hideaki Ohtaniが準優勝(二位)を獲得しました。焙煎の探求を通じて得た学びと、今後の展望を本記事でご紹介します。

ギーセン焙煎大会順位表

この大会には、全国から多くのギーセン使いが集まりました。それぞれの技術をプロファイルという形でプレゼンしカッピング評価するという会でした。参加者同士の競争はもちろん、互いに学び合う機会でもあり、特に焙煎の奥深さを実感する日となりました。

大会概要と目的

Giesen Roast Rumble 2025とは

-焙煎の精度で、浅煎りを極めろ!-

今年は浅煎りにフォーカスし、共通の課題豆で競技者の思い思いの「最高の浅煎り」で競います。 当日までに、これだ!と思う焙煎豆と焙煎プロファイルを運営に提出してください。 競技会当日には、競技者の皆様全員でブラインドカッピングを行い採点します! 最高に美味しい浅煎りを焼けるのはどのロースターだ!

競技会当日はカッピングだけではなく、提出いただいた焙煎プロファイルをもとにGIESEN JAPANが課題豆の焙煎の傾向や、課題豆へのアプローチ方法などの解説を行います。

開催目的(ユーザー同士の交流・技術向上)

同じ焙煎機を使う焙煎士同士での熱い戦いと、同じGIESENユーザーだからこその悩みの共有など、競技でもありコミュニティの場にもなればとの思いでこの競技会が発足されました。

GiesenRoastRumble2025
Giesen Roast Rumble2025

準優勝までの道のり〜選定した豆のプロファイル

ザグリ珈琲では最初に豆の分析から始めました。課題豆はホンジュラス産Parainema(パライネマ)のウォッシュです。聞き慣れない品種ですが主にホンジュラスで栽培されているそうです。ビジャサルチとティモール・ハイブリッドの交配種。生豆は比較的大粒でやや長く一見するとゲイシャ種のような形状。密度を測ったところ標高の割には744g/L!とかなり高く、水分値は10%!しかない。硬さは比較的柔らかい。相関図からはロブスタとアラビカの両方の特徴を持つことも見て取れます。

Honduras
Finca Regalo Dios
Maria Eugenia Caceres
Las Delicias, Danli, El Paraiso
1,350m
Washed

パライネマ種
WCRの珈琲辞典「パライネマ」→parainema

parainema

WCRの辞書を調べるとデータがあまりありませんが元となったT5276はティモールハイブリッド CIFC 832/2 xビジャサルチの交配種とされています。高地での品質ポテンシャは中間くらい。普段焼いている豆だとCaturraやCastillo、Catimorクラスに該当します。

遺伝子移入元となった[T5296]について。

コーヒーの品種改良において、T5296は重要なコーヒーノキさび病耐性植物ですが、世代間で安定していないため農家には推奨されません。クスカトレコとパライネマはどちらも、それぞれエルサルバドルとホンジュラスの国家育種プログラムで作られたT5296の系統選択です。さらに、新しいF1ハイブリッド品種の多くは、T5296とエチオピアの在来種を交配して作られました(例には、セントロアメリカーノ、ミレニオ、ムンドマヤなどがあります)。T5296は、1978年に米国国際開発庁(USAID)の中米プログラム地域事務所(ROCAP)とブラジルのカンピナス農業研究所(IAC)の資金提供を受けて設立された、中米地域コンソーシアムPROMECAFEの創設期に起源を持ちます。このコンソーシアムは、最近この地域に到来したコーヒーノキさび病による脅威に対応するためでした。サルキモール品種グループの詳しい歴史1958年か1959年、コーヒーのさび病の研究で有名なポルトガルのコーヒー鉄研究センター(CIFC)は、ティモール島から大量のティモールハイブリッドの種子を受け取りました。ティモールハイブリッドは、C. arabicaとC. canephora(ロブスタ)の自然交配種で、1920年代にティモール島で自然発生しました。ロブスタの遺伝子がこの品種にさび病抵抗性を付与しました。CIFCが受け取った2回の種子の出荷から、彼らはさび病への高い抵抗性に基づき、育種に使用する2つの植物を選びました。1967年、ポルトガルの育種家たちは、この病気に抵抗性があり、かつ密植できるようにコンパクトな樹形になるような、新しいコーヒー品種を作る研究を始めました。錆びにくいティモールハイブリッド植物の一つであるHDT CIFC 832/2は、コンパクトなヴィラサルキと交配されました。1971年、CIFCは、コーヒーノキの技術開発と近代化に関する地域協力プログラム(PROMECAFE)を設立し、コスタリカの熱帯コーヒーノキ研究センター(CATIE)にH361を送りました。そこで研究された個体群はT5296(「T」はCATIEの拠点であるトゥリアルバを表す)と命名されました。T5296の品種改良作業は、研究者AJ・ベッテンコートが主導しました。この中央試験から、T5296は地域の国家育種プログラムに送られました。ホンジュラスでは、さらなる世代の選抜により、パライネマとして知られる品種が誕生しました。エルサルバドルでは、さらなる世代の選抜により、クスカトレコとして知られる品種が誕生しました。プエルトリコでは、サルキモール個体群はリマニと呼ばれていました。ブラジルでも同様の選抜が行われ、オバタ(レッド)、トゥピ、IAPAR 59が誕生しました。一般的な認識とは異なり、「サルキモール」自体は明確な品種ではなく、類似した親を持つ多くの異なる品種の集合体であることに留意することが重要です。

ギーセンW1Aを使った浅煎り焙煎の温度管理とは

浅煎り焙煎を行う際には、焙煎の温度と時間が非常に重要です。温度管理を徹底し、焙煎の初期段階での火の入れ方が後のフレーバーにどのように影響を与えるかを理解することが求められます。具体的には、焙煎が進むにつれて、豆の色や香りに変化が現れるため、それを見逃さないようにすることが大切です。

ギーセン

与えられた量が3kgでした。届いてすぐワインセラーにて保管。投入量はギーセンの小型機ですので1.5kgくらいまでが適正です。1.5kgずつ2回なのか1kgづつ3回にするか悩みましたがガス抜きを考慮して500グラムずつ3回に、日を置いて別の火の入れ方で6回焙煎することに。各日3種類の焙煎はどれもストライクを狙いながら微調整しました。

Parainema

中身をチェックするため焙煎した豆の断面。

アプリで動画を作りながら焙煎しました。記録に残すこともたいせつだと思っております。

課題と改善ポイント

実際カップをとってみると派手さはありませんが繊細なフレーバーと甘さ、柑橘系オレンジのような酸が感じられます。当店の焙煎している他の豆に例えるといくつかの品種が該当します。

水はクリスタルガイザーでしたので同じミネラル比率のカスタムウォーターを浄水器で調整しての焙煎即カッピング。フレーバーは予想通りでしたが全く欠点のないきれいな焙煎になりました。

カッピング

ザグリ珈琲店内で6検体のブラインドトーナメント予選。最終的に2つに勝ち残った豆のカッピング。ドライとフレーバー強調型とスウィートネスとフレーバー強調型。どちらも申し分ない完璧な仕上がりでしたが結果、10日後に水が合っていると予想する方でエントリー。異なる焙煎方法によって、同じ豆でも全く異なるフレーバーが生み出されることをあらためて実感しました。

さて、いよいよ決戦です!

焙煎してからの日数

競技者全員の焙煎してからの日数。私の場合は焙煎してから11日。つまり6月12日に焙煎しています。競技者4人が同じ日に焙煎しているのが見て取れます。

自己紹介を兼ねたプロファイルプレゼンテーション

開会式

開会式の様子。

プロファイル発表

ひとりづつ自分のプロファイルを発表。他人のプロファイルを見るのは初めて!勉強になります。

ローストプロファイル発表

自分のプロファイル発表場面。6種類焙煎したことを30秒くらいでざっくりと話しています。本当は30分くらいは話せそうなのですがそこは抑えました。

評価カッピング。

Giesen Roast Rumble2025

競技ルールは次の通り↓。

GiesenRoastRumble2025競技ルール

ギーセンローストランブル2025

giesen roast rumble2025

全員が黙々とスコアリング。

カッピング

10セットづつ2回に分けてブラインドで採点していきます。スコアシートはSCAではなくCVA形式です。

豆香洞

終盤には豆香洞さんの焙煎セミナー。ドラム回転の違いでのカッピングでした。

ギーセンローストランブル2025

豆香洞さんドラム回転セミナー

大和の焙煎機やギーセン大型機での解説。これを聞けただけでも参加して良かったと思いました。

豆香洞さんドラム回転セミナー

ドラム回転の違いは非常にわかりやすく勉強になりました。早速深煎りの参考にさせていただきます!

【準優勝】Giesen Roast Rumble 2025 東日本トップに!

優勝は愛知県のオワゾーコーヒーの花村さん。私は準優勝二位でしたが東日本チャンピオンになりました。

オワゾーコーヒー花村さん

チャンピオン花村さんによるプロファイル解説。Mということはドラム回転固定ですから主に火力での調節です。

Giesenroastrumble

表彰式と記念撮影。

学べた技術・知識

大会を通じて得た技術や知識は、今後の焙煎活動に大いに役立つものとなりました。特に、他の参加者との交流が自分の視野を広げ、焙煎についての新たなアプローチを学ぶことができました。

プロファイル

他参加者との比較・独自性

今回何よりも勉強になったのは同じギーセン2kg機を使っている人がどんな焙煎をしているかログを見れたこと、話しを聞けたこと。他者のプロファイルを見ていて技術的な気づきがたくさんありました。他のギーセン使いの方たちのログはお宝です!

今後の挑戦と振り返り

ギーセンのような焙煎機を使う人たちだけあって有名ロースターも多く強豪揃いでしたがその中での2位でしたので自分がやってきた焙煎に確信が持てました。今までだと本当にこれで良いのか?という暗中模索でもあったのです。これでようやくスタートラインに立てた気がします。

今後は、今回のエントリー経験を生かし、さらなる技術向上を目指します。焙煎は奥深い技術であり、常に自分以外の他者からも学び続ける姿勢も大切だと思っています。

クラウドデータ化

エントリー豆の焙煎データはクラウド保存したためいつでも自動焙煎可能です。以下が提出豆の焙煎データです。Bフェーズを限界まで長めにとった焙煎になりますベイクドが出るか出ないかギリギリ↓。

プロファイル

アピアランスにもこだわりました。粉になってしまえば分かりませんが一粒一粒を確認しながらピッキングし豆の状態での美しさにも力を入れてます。ゲイシャ種にも劣らない外観です↓。

Parainema

最後に、今回のGiesen Roast Rumbleを通じて学んだすべてのことが、私の焙煎に対する情熱をさらに強くしてくれました。次回のローストコンペにも挑戦し、さらなる高みを目指していきます。

同時期にブラジル豆の焙煎大会も決勝進出

同じ頃ブラジルの豆の焙煎大会にエントリーしていまして全国から60名の中から決勝に勝ち残りました。課題豆は日本にはほとんど流通しないブラジル産ロブスタ「コニロン」です。私はQロブスタグレーダーでもありますのでジャッジを驚かせるようなフレーバーMAXの焙煎で臨みました。

普通は誰もやらないであろう一粒ずつ豆を計量検査しての焙煎↓。

コニロン

何日もかけて選別したスクリーンサイズ別の豆たち↓。

ブラジル焙煎大会

水分値など豆の状態を測る。ディフェクトを徹底的に弾く↓。

コニロン

複数のアグトロン計で測る↓。

アグトロン計で測る

アピアランスにこだわり美しい豆に仕上げる↓。

ブラジル焙煎大会

自分で焙煎した5種類の予選で勝ち残った豆でエントリー。当初普通に焼くパターンで何種類か焙煎しましたが、比較するとどれも優勝レベルの豆でどれでエントリーするか迷いました↓。

カッピング

ザグリ珈琲の焙煎教室では焙煎技術をしっかり学べます。大会上位に入る技術を理屈で学ぶことができます。

プロのための焙煎スクール

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